■エッセイ

2.デザイナーを目指す君へー5.(インダストリアルデザイン松坂研究室ブログ2からコピー)「昔拾った縄文人の石鏃を眺めてみた」

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 

「昔拾った縄文人の石鏃を眺めてみた」:インダストリアルデザインには、問題解決型と創造提案型があります。世の中の多くの工業製品が問題解決型ですが、1990年以降インターネットの爆発的な普及がきっかけで創造提案型デザインへ軸足が移ってきたように思います。両者の関係ですが、創造提案型の本物のみが生き残り、やがて問題解決型となり改良を続けていきます。私の手のひらに石鏃があります。縄文人はこの石鏃で何を狩ったのでしょうか。イノシシやシカでしょうか。この石鏃は紛れもなく10000年前に生きていた私たちの祖先がこの土地で家族の食料の確保のため一生懸命に石を割りながら作った武器です。それまで自然物の木や石を投げる狩りの仕方から弓で射るという戦いのスタイルに激変しました。この武器を作っている時の古代人の気持ちはどうだったでしょうか。人間は1~2歳の幼児であってもブロックを与えると、夢中になって上手に立体造形物を作ります。大人になった私たちもパーソナルコンピューターで図面を引いている時間よりも「スタイロフォームを削っている時」に充実感を感じるのはこのような昔からの遺伝子が目覚めるからでしょうか。この石鏃から、わたしたちは当時の人間たちも手で物をつくるという喜びを感じながら作っていたと想像します。このような「手で物を作る」のは人間のみに与えられた能力です。そのような時に少しずつ道具というものが、人の手の機能の延長として改良されていったことを改めて思います。