■エッセイ

2.デザイナーを目指す君へ.(インダストリアルデザイン松坂研究室ブログ2からコピー)馴質異化(じゅんしついか)

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あたりまえ                                              

 日常見慣れた光景を見慣れないものとする発想を「馴質異化(じゅんしついか)」という。この発想法は普段見慣れた光景は当たり前ととらえられているが、当たり前でない光景に見ることである。何となく空を見ていると空には雲が流れており、あたりまえの光景だ。しかし、その流れるスピードから天気予報のインジケーターとして見ることも出来る。同じ空の雲の光景がに発想次第で異なる機能として見ることが出来る。一方、「異質馴化」の方は、なかなか事例を探すことが難しい。ある人が「これまで無関係、無用と思われていたものに注目し、それを役立たせるのが「異質馴化」である」[https://educalingo.com/pt/dic-ja/shinekutekusu]とうまく解説しているのを発見し、凄くしっくりいった。いままでに使われていなかったものに注目し調べた結果、新しい用途を発見するということか。この視点でもう一度、「馴質異化」を開いてみると、先に用途が決まっていて、それを達成するために今までの知識のなかから使えそうなものを再発見するというように説明出来やっと肩の荷が下りる。学生時代(1977年)岡田朋二先生の授業では、クワガタの「つの」の動きから荷物の寸法に合わせて左右から挟む構造の台車を提案したところ周りのみんなに良い例として紹介くださった。でもこれは「馴質異化(じゅんしついか)」であった。しかし、「異質馴化」ともとらえることも出来る。視点の解釈の違いか?いずれにしてもデザインコンセプトのネタとは日常のどこにもアイデアが潜んでいる。この「シネクティクス(ゴードン法)」は当時の美大のデザインではあまりお見掛けしないユニークな創造工学の科目である。ここ(芸文短大)の専攻科の授業でも課している。イギリスのマーク・ニューソン氏のデザインは優しい自然な造形で、本人の人柄が見えるような奥の深いデザインである。確か、アップルデザインの時代を築いたジョナサンアイブ氏が退社し組んで仕事をしている。不要なものは足さないミニマルな思考でありながら温かみのあるデザインだ。そのマーク・ニューソン氏のデザインは日ごろ見慣れた砂時計の砂が落ちるという動詞のデザインを再度見つめ直して、注いだ時にはじける金色のシャンパンの現象を砂時計のデザインの光景とした。これこそ「異質馴化」であろう。日常の関係の無さそうな素材を金色泡の砂時計という機能に結び付けた。マークニューソン氏の目には何気ない普段の映っている光景は当たり前ではないのだ。